日本国籍を取得する帰化申請は一般的に、1年くらいの期間を必要とし、100枚以上の書類を用意しなくてはならないと言われています。
外国語で書かれた複雑な日本の書類を100枚以上収集・作成するのはそれだけでも大変ですが、提出する公的書類のなかには交付日から3ヶ月以内のものと期間制限があることもあり、帰化申請は優先順位を決めて計画的に手続きを進めていく必要があります。
以下に、日本に今後も住み続けたいと考えるミャンマー人が効果的に帰化申請できるよう、日本国籍取得に必要となる書類と帰化条件を紹介します。
目次
ミャンマー人の帰化書類
ミャンマー人が日本に帰化申請する場合に必要になる一般的な書類は次のようになります。ただし、申請する方の身分・職業など個々の状況に応じて必要な書類が異なりますので詳しくは申請先の法務局や行政書士にご相談ください。
- 帰化許可申請書
- 親族の概要を記載した書類
- 帰化の動機書
- 履歴書
- 生計の概要を記載した書類
- 事業の概要を記載した書類
- 住民票の写し
- 国籍を証明する書類
- 親族関係を証明する書類
- 納税を証明する書類
- 収入を証明する書類
書類の種類 | 取得先等 |
帰化許可申請書 | 申請先から取得 自身で作成 |
親族の概要を記載した書類 | 〃 |
帰化の動機書 | 〃 |
履歴書(その1、その2) | 〃 |
生計の概要を記載した書類 | 〃 |
事業の概要を記載した書類 | 〃 |
住民票の写し | 各種公的機関から取得 |
国籍を証明する書類 | 〃 |
親族関係を証明する書類 | 〃 |
納税を証明する書類 | 〃 |
収入を証明する書類 | 〃 |
ミャンマー人の帰化必要書類の取得先と状況に応じて必要になる書類
必要書類の取得先になります。
どこへ行けばどの書類を揃えられるかといった取得先に加え、申請者の状況によって必要になるなどの一覧以外の書類についても触れていきたいと思います。
法務局で取得する書類
- 帰化許可申請書
- 親族の概要を記載した書類
- 帰化の動機書
- 履歴書(その1、その2)
- 生計の概要を記載した書類(その1、その2)
- 事業の概要を記載した書類(個人事業主や法人の経営者の場合に必要)
これに加え、居住付近の略図等や勤務先付近の略図等、申述書を取得します。また、申請者自身や同居家族が土地や家屋、マンションを所有している場合や会社を経営している場合には土地・建物の登記事項証明書、法人の登記事項証明書を取得する必要があります。
書類の種類 | 取得先等 |
帰化許可申請書 | 書類を申請先の法務局で取得 自身で記入・作成 |
親族の概要を記載した書類 | 〃 |
帰化の動機書 | 〃 |
履歴書(その1、その2) | 〃 |
生計の概要を記載した書類(その1、その2) | 〃 |
事業の概要を記載した書類(個人事業主や法人の経営者の場合に必要) | 〃 |
居住付近の略図等 | 〃 |
勤務先付近の略図等 | 〃 |
申述書 | 〃 |
土地・建物の登記事項証明書/法人の登記事項証明書 | 近くの法務局などで取得 |
市役所・区役所などで取得する書類
- 住民票の写し
住民票以外にも申請者の状況によって取得する必要がある書類があります。
例えば、配偶者や子が日本人の場合や両親の一方が日本人の場合、両親・兄弟姉妹で帰化している場合には戸籍謄本も必要になり、場合によっては除籍謄本・改正原戸籍謄本・戸籍の附表が必要になります。
また、申請者本人や兄弟姉妹が日本で生まれている場合や外国籍である両親が日本で結婚・離婚している場合などによって出生届・婚姻届・離婚届などの記載事項証明書が必要です。
- 納税を証明する書類
住民税の納税証明書、住民税の課税証明書となります。(直近1年分 同居の家族分も必要)
申請する方や配偶者に収入がない場合、または収入が低い場合には非課税証明書が必要です。
書類の種類 | 取得先 |
住民票の写し/住民票の除票 | お住まいの市・区役所、本籍地の市・区役所など |
戸籍謄本/除籍謄本/改正原戸籍謄本/戸籍の附表 | 〃 |
出生届/婚姻届/離婚届/死亡届の記載事項証明書 | 〃 |
住民税の納税証明書/課税証明書/非課税証明書 | 〃 |
母国で取得する書類
- 国籍を証明する書類
- 親族関係を証明する書類
ミャンマーの公的機関より該当書類を取得します。
基本的には本人、または本人と両親の証明書が必要です。状況により自身の子や兄弟の証明書などが必要になります。
書類の種類 | 取得先 |
国籍証明書 | 母国の公的機関 国により日本にある大使館/領事館 |
出生/結婚/離婚/家族関係の証明書 | 〃 |
税務署などで取得する書類
- 納税を証明する書類
複数の勤務先から給与を得ている方や副業などで本業以外に収入がある方など、給与所得者で確定申告をしている方は個人の所得税の納税証明書が必要になります。
他方、会社経営者や個人事業主の場合には法人税・消費税・所得税・事業税といった各税の納税証明書が直近3年分など一定期間分必要になります。
書類の種類 | 取得先 |
所得税の納税証明書 | 税務署など |
法人税/消費税/事業税/法人都・県・市民税の納税証明書 | 〃 |
勤務先から取得する書類
- 収入を証明する書類
源泉徴収票や在勤及び給与証明書となります。在勤及び給与証明書は申請者の勤務先にお願いして作成・発行してもらいます。申請者自身が事業行っている場合にはご自身で作成する必要があります。
書類の種類 | 取得先 |
源泉徴収票 | 勤務先 |
在勤及び給与証明書 | 〃 |
その他の書類
ご自身の手元にある書類のコピーまたは状況に応じて該当機関から取得する書類になります。
書類の種類 | 取得先 |
パスポートのコピー | ー |
在留カードのコピー(表・裏) | ー |
運転免許証のコピー(表・裏) | ー |
運転記録証明書/運転免許経歴証明書 | 自動車安全運転センター |
卒業証書のコピー/卒業証明書 | 最終卒業校 |
資格証明書のコピー | ー |
不動産賃貸借契約書のコピー | ー |
確定申告書の控えのコピー | ー |
営業許可証のコピー | ー |
源泉所得税の納付書及び領収書/源泉徴収簿のコピー | ー |
年金保険料領収書のコピー/年金定期便/国民年金保険料納付確認書 | 年金事務所 |
厚生年金保険料領収書のコピー/社会保険料納付確認書/厚生年金加入届の控えのコピー | 〃 |
健康保険証のコピー/国民健康保険の納付証明書/公的年金等の源泉徴収票/後期高齢者医療保険料の領収書等の写し/介護保険料の納付証明書等 | ー |
写真(家族・友人と撮影されたもの複数枚) | ー |
ミャンマー人の帰化条件
1.住所条件
日本の国籍を取得するためには帰化申請をする前に、ある程度の期間、日本に居住していることが条件となります。一般的には帰化の申請をする時までに引き続き5年以上日本に住んでいることが求められます。
5年間一度も出国経験がない方は問題ありませんが、出張や旅行などで日本を長期にわたり離れている方は注意が必要になります。
具体的にはおおよそ90日以上の出国、又は1年間のうち合計でおおよそ100日以上の出国がある場合には引き続き住んでいる期間としては認められず改めて一から期間を計算し直すことになります。
また、上記に加え就労系在留資格をもって3年以上働いていることも条件となっています。正社員、契約社員、派遣社員等で3年間の期間を満たすことが求められますので留学生でのアルバイト期間は認められないことになります。
ただし、日本人と結婚している外国人や父または母が日本人である方、10年以上日本に住んでいる方などは上記条件が緩和され、日本に住んでいる期間が5年以上から3年以上に短縮されたり、働いている期間が3年以上から1年以上などとなります。
2.能力条件
帰化を希望する人が18歳以上であり、母国の法律で成人に達していることが条件となっています。
例えば申請時に20歳である場合、18歳以上の条件はクリアしていますので母国での成人年齢が同様に18歳であれば問題なく条件を満たしていることになります。
しかし、母国での成人年齢が21歳の場合には条件を満たしていませんので単独での帰化申請はできないことになります。
つまり日本でも母国でも大人として自分の判断に責任を負える年齢に達していなければ認められませんという条件です。
このような条件がある一方で、住所条件同様に能力条件にも緩和条件があります。 例えば親が先に帰化をしている場合や親と一緒に帰化する場合には18歳に達していない未成年者であっても申請することができます。
3.素行条件
素行が善良であることが条件となっています。
非常に抽象的でわかりにくい条件ですが簡単に言えば、帰化申請者の今までの行ないに問題がないことを条件としています。
具体的には、義務づけられた税金(所得税や住民税など)を納めているか、年金を継続的に滞りなく支払っているか、健康保険料は支払っているか、犯罪(交通違反やオバーステイなど含む)を犯していないかについて確認していくことになります。
会社員の場合には、税金や年金は給与から差し引かれていることが多数だと思いますのでさほど心配する必要はないと思いますが、住民税を自身で支払う選択をしている方は注意が必要です。
また、配偶者(奥さんなど)や被扶養者(お子さんなど)がいる場合にはそちらの納付状況についても確認が必要です。
個人で事業をしている場合や会社を経営している場合にはご自身についての税金・年金の他、事業税や法人税、従業員への厚生年金加入・支払い状況なども条件になってきます。
4.生計条件
日本で安定的な生活ができるだけの経済力があることが条件となっています。
定期的で継続して大きい金額が毎月収入として手に入ればいいというわけではなく、その収入に対してどのくらいの支出があり、今後、経済的に生活に困るようなことがないかと収支のバランスを求められることになります。
経済力は申請者本人のみの単独での経済力だけではなく、同居する配偶者などといった生計をひとつにしている家族などがいる場合にはその家族等を含めた単位でのものとなります。
例えば申請者本人が専業主婦であり無収入であっても配偶者である夫が会社員等で安定的な収入が継続的にあり、その収入に対してバランスのとれた支出となっていれば問題はありません。
一方で、前述した通り、いくら生計をひとつにしている配偶者や家族などで収入が多くても毎月の家賃や教育費、食費などでそれを上回る支出がある場合には安定した生活をこれからも送れるのかと疑問に思われ、条件を満たしていないと判断される可能性が高くなります。
単身者であれ家族単位であれ、収入が多かれ、少なかれいづれにしても収入に見合った支出で安定的な生活が送れるような経済状態が条件とされています。
5.重国籍防止条件
日本の帰化申請では重国籍を防止するための条件が設けられています。
つまり母国の国籍を持ち続けながら日本国籍を持つという2重国籍は認めておらず、日本の国籍を取得するには母国の国籍を離脱することが求められています。
日本国籍を取得した場合、当然に母国の国籍を失うといった定めがある国は一般的に問題になりませんが、各国それぞれによってルールは異なりますので、まずはご自身の母国がどのような定めをしているか確認してみてください。
6.憲法遵守条件
文字通りに解釈するならば憲法という決められたルールを守ること・従うことを条件としています。
具体的には国籍法で次のように定められています。
日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと
つまり反社会的な活動をしていないか、または過激派やテロ組織、暴力団などといった反社会的勢力に過去も含めて加入していないことなどが挙げられます。
多くの方は問題ないと条件と考えますが、申請者本人だけでなく、家族や親族、関係者などもこの条件を満たしていることが必要になりますので注意が必要です。
7.日本語能力条件
国籍法に記載はない条件ですが、一定程度の日本語能力が求められます。
一般的には小学校3年生レベル、日本語能力検定N3程度が必要と言われています。
条件の審査は法務局の担当官が面接など申請者とのやり取りや動機書等の日本語記述を見て行います。その際、担当官が日本語能力に疑問を持った場合には日本語テストが実施されます。
普段の生活において母国語を使用しており、読み・書き・話すに不安を感じる方は十分に復習してから申請することをお勧めします。
この先、日本国籍を取得して日本で生活するにあたってはこれまで以上に様々な場所で日本語が必要になります。
例えば、職場・子供達の学校・市役所といった自身や家族の人生における色々な局面で日本語の読み・書き・話すことが必要になり、また、日本の法律や社会制度、個人の権利や義務などの理解にも日本語が必要です。 条件以前に、日本で今後安定した生活を送るためにも一定以上の日本語能力は必要だと考えます。