ブログ
12.132019
遺言書の書き方 公正証書遺言
遺言書には自分で書ける自筆証書遺言と公証人に依頼して作成する公正証書遺言が一般的です。
信頼性が高くもっとも安心と言われる公正証書遺言の書き方について紹介します。
1.公正証書遺言とは
公正証書遺言は公証役場で公証人に依頼をして作成する遺言書です。
自筆証書遺言と比べ信頼性が高くもっとも安心な遺言書とされています。
自筆証書遺言では全文を自分で書くことが必要でしたが、公正証書遺言では自筆を必要とせず、公証人に遺言内容を伝えて公証人が筆記して作成する遺言書です。
遺言書の内容はもちろん遺言者自身が決めますが、遺言書を書き作るのは公証人という検事や判事などの法律実務経験者からなる公務員です。
法律実務経験者からなる公証人が作成する遺言書なので法的要件を正確に満たしたものが作られ、書き方等の不備による無効の心配がありません。
また、作成するときには2名以上の証人立ち会いが必要なため遺言の正当性が証明されます。
保管も公証役場でおこないますので発見されないことや偽造のおそれがありません。
このような理由から信頼性が高くもっとも安心な遺言書と言われています。
2.自筆証書遺言との違い
①作成方法
自筆証書遺言は遺言者本人が全文を書かなくてはなりませんでしたが、公正証書遺言は公証役場で公証人が遺言者から話を聞きその内容を筆記し遺言書を作成します。
当日は証人2名以上の立ち合いが必要です。
②時と場所
自筆証書遺言はいつでもどこでも作れますが、公正証書遺言は公証人と時間を合わせて公証役場で作ることになります。
※病気や高齢などの理由により公証役場にいけない場合は公証人に出張してもらうことができます。
③費用
自筆証書遺言には費用はかかりませんが、公正証書遺言は公証人手数料がかかります。
更に証人をご自身で用意できない場合は公証役場から紹介を受けるか行政書士等の専門家に依頼することになりますがその場合にも費用がかかります。
※次の方は法律によって証人になることができません。
・未成年者
・推定相続人、受遺者、その配偶者や直系血族
・公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
④保管
自筆証書遺言の保管方法は自宅などが一般的ですが、公正証書遺言は公証役場で原則20年間保管されます。
⑤手続き
自筆証書遺言は相続開始後に遺言書を発見した場合、開封せずに家庭裁判所で検認手続きをしなければなりませんが公正証書遺言では必要はありません。
⑥信頼性
公正証書遺言は法律実務経験者の公証人が遺言書を作成するため要件不備により無効となる心配がありません。また作成後に公証役場で保管するので発見されないことや偽造・改ざんされるおそれもありません。
さらに証人の立ち合いが必要であるなど、このようなことが信頼性が高くもっとも安心と言われる要因となっています。
※2020年7月より法務局での自筆証書保管制度が始まります。この制度を利用した場合検認手続きは不要になります。
3.メリットとデメリット
メリット | デメリット | |
自筆証書遺言 |
・いつでもどこでも作れる ・すぐ書き直せる ・費用がかからない |
・形式等の要件不備で無効になる可能性がある ・発見の有無や偽造など保管する場所に悩む ・裁判所での検認が必要になり相続開始後の手続きに時間がかかる |
公正証書遺言 |
・公証人が作成するので形式等の要件不備による無効の心配がない ・病気や高齢などの理由から自分で書けない人でも作成できる ・発見されない心配や偽造、改ざん等の心配がない ・検認不要なので相続手続きがすぐ開始できる |
・形式の法的要件は満たしてくれるが内容(トラブル回避)について提案やアドバイスは期待できない ・公証役場に足を運ぶ、証人2名以上必要など時間と労力がかかる ・費用がかかる
|
4.具体的な手続方法
①遺言書の内容を決める
どのような財産がありどのくらいの価値があるか調べ、誰に何をどのくらい遺すか考えて遺言書の下書きを作成します。
②証人への依頼
証人2名を決め、依頼しておきます。
③必要書類等を準備
必要書類の準備をします。
・遺言者の印鑑登録証明書
・遺言者と相続人との続柄がわかる戸籍謄本
・受遺者の住民票(財産をもらう人が相続人でない場合 例 知人など)
・相続財産の資料
不動産の場合 登記事項証明書、登記簿謄本
固定資産課税通知書又は固定資産評価証明書
預金の場合 通帳コピーやメモなど金融機関名 支店 種別 口座番号がわかるもの
・証人2名の資料(職業・住所・氏名・生年月日がわかるようなメモなど)
・遺言執行者の資料(職業・住所・氏名・生年月日がわかるようなメモなど)
④公証役場に相談予約
公証役場に電話をかけて公正証書遺言を作りたい旨伝え、必要書類の確認と相談日時を決めます。
※公証役場は全国に約300か所あります。どこを選んでも問題ありませんが今後やりとりすることを考えて通いやすいところがよいと思います。日本公証人連合会のページに公証役場一覧がありますので都合がよい場所を選びましょう。
⑤公証役場で実際に相談
必要書類と遺言書の下書きを持参して公証役場へ行き公証人に相談します。作成当日に必要なものと手数料も忘れずに確認します。
⑥公証人より遺言書案の提示
相談時に受けた内容で公証人が遺言書の原案を作成します。郵送などで原案の提示があるので確認します。
⑦作成日時を決める
公証役場に連絡を入れて遺言書の作成日を決め、当日に必要なものを確認します。日程が決まったら証人に連絡をします。
⑧公証役場で遺言書を作る
事前に確認した必要なもの(実印や手数料、公証人に事前に依頼されていたもの)を持参して証人と一緒に公証役場へ行き、次の順で遺言書を作っていきます。
遺言者・証人の本人確認
↓
遺言者が遺言内容を公証人に口頭で説明
↓
公証人が準備した遺言書を読み上げ
↓
遺言者が公証人の読み上げた遺言内容を間違っていないか確認
↓
遺言内容に間違いなければ公正証書遺言の原本に遺言者が署名押印(証人も署名押印)
↓
公証人が署名押印
↓
公証人から公正証書遺言の原本・正本・謄本の違い、保存期間などの説明
↓
正本と謄本の受取
↓
手数料の支払い、証人への謝礼
↓
終了
5.期間
遺言者本人の準備や公証人のスケジュールにもよりますが公証人への相談から公証役場での作成まで余裕をみて1ヶ月くらいと考えておけばよいと思います。
6.費用
公証人手数料として次の金額が日本公証人連合会ホームページに掲載されています。
この表が基準になりますがいくつか費用に関する留意点があります。
・相続人ごとに手数料を計算
・全体の財産が1億円以下の場合に遺言加算として11,000円が別途計上
などがあります。
手数料の例をあげると
計算例1
相続人が配偶者のみの場合
相続財産3,000万円
不動産2,000万円 預貯金1,000万円として
相続人 配偶者
相続内容 配偶者に3,000万円(不動産と預貯金)
と仮定すると
目的の価額3,000万円⇒手数料23,000円
遺言加算11,000円
計 34,000円(23,000+11,000円)となります。
計算例2
相続人が配偶者と子1人の場合
相続財産3,000万円
不動産2,000万円 預貯金1,000万円として
相続人 配偶者と子1人
相続内容 配偶者に2,250万円(不動産と預貯金)
子に750万円(預貯金)
と仮定すると
目的の価額 配偶者分2,250万円⇒手数料23,000円
子の分 750万円⇒手数料17,000円
遺言加算11,000円
計 51,000円(23,000+17,000円+11,000円)となります。
7.まとめ
公正証書遺言を選択する方は年を追うごとに増加しており、日本公証人連合会のHPによると平成20年の作成件数76,436件の対し平成30年には110,471件と10年前と比べ約35,000件45%の増加となっています。
他方、自筆証書遺言も平成20年には13,632件、平成30年は17,487件と約4,000件28%の増加となっています。
※自筆証書遺言の件数は検認件数 裁判所司法統計より
遺言書を作成する人が以前と比べ増加している今日、せっかく作るのだから安心できるものをと公正証書遺言を選択する人が多くなっていると考えられます。
また、初めは自筆証書遺言だったけれど書き直しをきっかけに公正証書遺言に変更するという方もいらっしゃいます。
公正証書遺言は費用や時間、手間などがかかるというデメリットがあります。
しかし、多くの法律専門家が勧めているようにそれ以上に高い信頼性により大きな安心が得られる制度となっています。
費用や時間、労力がかかっても確実なものを作り安心したいという方は公正証書遺言を検討されてはいかがでしょうか。
当事務所では、依頼者の意思に沿った遺言書の案文提案や必要書類の取り寄せ、公証人との打ち合わせなど遺言者であるあなたをサポートする公正証書遺言作成サービスを承っております。
お気軽にご相談ください。