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9.82020
遺言書 遺言執行者

遺言書は書くことが目的ではありません。
遺言者亡き後にその内容を実行してもらうために作るものです。
相続の時に「だれが遺言の内容を手続きするのか?」とならないためにも事前に実行者を定めておくのが安心です。
1.遺言執行者とは
民法では
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
となっており
また、
遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
としています。
つまり、遺言内容を実現するために強い権限を持ち必要な手続きを実行してくれる人のことです。
2.遺言執行者の仕事
遺言者が亡くなった後に遺言書の内容に従い各種相続手続きをおこないます。
具体的には下記の流れで手続きをしていきます。
1)就任の通知 相続人等に対し遺言執行者になったことをお知らせします。
2)財産目録の作成・交付 財産を調査して一覧表を作成、相続人等に交付します。
3)遺言内容の手続き
①預貯金の払い戻し(金融機関の手続き)
②不動産、株式等の名義変更(法務局や証券会社などの手続き)
③死亡保険金受取人変更(保険会社の手続き)
④認知(行政の手続き)
⑤推定相続人の廃除及び廃除の取り消し(家庭裁判所の手続き)
など
4)手続き終了報告 相続人等に対し遺言執行の完了を報告します。
3)の①②③は遺言執行者が指定されていなくても問題ありませんが、④認知⑤推定相続人の廃除及び取り消しは遺言執行者が必要になります。
3.遺言執行者には誰がなるの?
未成年者と破産者以外であれば誰でも遺言執行者になることができます。
相続人でも銀行などの法人でも問題ありません。
一人だけでなく複数の人がなることもできます。
遺言書を依頼した行政書士などの専門家にそのままお願いするケースも多いです。
4.選任方法
一般的な選任方法は遺言書での指定です。
遺言者は遺言で一人又は数人の遺言執行者を指定することができますので遺言書に「遺言執行者として長男○○を指定する」と書くことで遺言執行者の指定になります。
相続人であれば上記の書き方でわかりますが、専門家や法人など第三者を指定する場合は指定したい人の住所、職業、名前、生年月日などを記載して特定できるようにします。
他の方法では、第三者に指定を委託する遺言書を作成して委託された人が遺言執行者を指定する方法と家庭裁判所に請求して選任してもらう方法があります。
5.遺言執行者はかならず必要なの?
遺言書の内容に認知、推定相続人の廃除及び廃除の取り消し、一般財団法人設立、信託の設定がある場合には遺言執行者が必要になりますが、それ以外の内容であれば遺言執行者がいなくても法律的には問題ありません。
預貯金などの銀行手続き、有価証券などの証券会社への手続き、自動車などの行政への手続き、不動産の相続手続きなどを相続人等全員の協力でおこなっていきます。
6.メリット
遺言執行者を指定しておくと手続きがスムーズに行われます。
代表的な例を挙げれば銀行手続きです。
故人の支払いや遺産の分配のために口座の解約手続きをおこないますが、銀行の手続きは遺言執行者がいない場合、相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明・実印・署名が必要になります。
遺言内容に不満がある相続人や地理的に離れている相続人がいる場合、戸籍や印鑑証明書・実印などをやり取りするには困難な場合が多く、労力も時間もかかります。
遺言執行者がいれば、他の相続人の印鑑証明書など必要なく、遺言執行者の印鑑証明書と実印・署名で済んでしまいますのでスムーズに事が運びます。
また、相続人以外に財産を遺す場合(遺贈)も同様です。
例えば遺言者が相続人以外の人に対し不動産を遺す場合、その不動産の名義変更には相続人全員の協力が必要になります。一人でも反対者がいれば手続きは前に進まなくなりますが、遺言執行者がいれば相続人の協力はいらず、遺言執行者と不動産を遺してもらった方で手続きすることができます。
このように遺言執行者がいると実務的に円滑な手続きが進むため、余計なトラブルを回避してスムーズに遺言内容が実行されます。
7.費用
専門家はもちろん、一般的には専門家以外の方にお願いする場合にも報酬がかかります。
遺言書に記載があればそれに従うことになりますし、記載がない場合には相続人との話し合いで決めるか家庭裁判所に決めてもらうことになります。
金額は職種や事務所によって大きく異なってきますが共通するのは相続財産の金額によって定めている点です。
インターネットなどであらかじめ相場を調べ、ご自分の財産金額に対して妥当だと思える金額を判断してください。
おおよそですが相続財産の1~3%、最低金額10~30万円からが一定の目安になるかと思います。
8.まとめ
一定の事項を除けば遺言執行者は定めなくても問題ありません。
しかし、遺言書の目的である遺言内容の実現には法律的にも実務的にも遺言執行者がいた方が間違いなくスムーズです。
ただ、不慣れな相続人等一般の方だと手続きに時間を要し、負担も大きくかかります。
周りも心配や不安を感じ、それが不満につながってきますので余計なトラブルに発展しかねません。
費用はかかりますが、可能な限り専門家に任せ、迅速かつ確実に手続きを進めてもらう方が遺言者・相続人双方が安心できるのではないかと思います。