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1.82020
遺言書 検認

公正証書を除く遺言書には家庭裁判所での検認が必要です。
検認とはどのようなものでどのようにして手続きを進めていくかまとめてみました。
1.検認とは
裁判所Webサイトではこのように紹介されています。
遺言書(公正証書による遺言を除く。)の保管者又はこれを発見した相続人は,遺言者の死亡を知った後,遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して,その「検認」を請求しなければなりません。また,封印のある遺言書は,家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています。
検認とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
つまり検認とは
遺産を引き継ぐ人へのお知らせと遺言書への不正防止を目的とした手続きということです。
2.検認をしなかった場合
法律では公正証書を除く遺言に関して検認手続きを義務づけています。
家庭裁判所での検認手続きを経ず、遺言書の開封や遺言内容を実施してしまった場合5万円以下の罰金(過料)になります。
間違って遺言書を開けてしまった場合、遺言書が無効になってしまったり遺産を相続できなくなるようなことはありませんが銀行口座や不動産の名義変更など相続手続きを行う際に検認済証明書付きの遺言書を求められますのでこのような場合でも検認手続きは必要になります。
3.検認手続きの進め方と流れ
①必要書類を収集
家庭裁判所に検認を依頼するために必要な書類を用意します。
必要書類
・家事審判申立書
・当事者目録
・遺言者の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本(除籍・改正原戸籍)
・相続人全員の戸籍謄本
・遺言者のお子さんが亡くなっている場合、亡くなったお子さんの生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本(除籍・改正原戸籍)
・その他必要になる方の戸籍謄本
※誰が相続人でどなたが亡くなっているかによって必要になる戸籍謄本が変わります。
②書類の作成
家事審判申立書と当事者目録を作成します。
※必要書類(家事審判申立書・当事者目録)と記入例は裁判所Webサイトでご確認ください。
③家庭裁判所へ必要書類を提出
遺言書の保管者又は発見した相続人が家庭裁判所に提出します。
提出先になる裁判所は遺言者の最後の住所地を管轄にしている家庭裁判所になります。
※管轄はこちらの裁判所Webサイトでご確認ください。
④裁判所から検認期日の通知
書類提出後、裁判所より相続人全員に対し検認する日のお知らせがあります。
申立人は立ち合いする必要がありますが他の相続人は任意になります。
⑤検認日
申立人は遺言書・申立人の印鑑・裁判所から指示されたものを持っていきます。
家庭裁判所で相続人立ち会いのもと裁判官が遺言書を開封して検認がおこなわれます。
その際、いくつかの簡単な質問がありますので正直に答えます。
⑥検認済証明書の申請
検認を終えたら検認済証明書の依頼をして発行してもらいます。
⑦検認済通知書
後日、立ち合いに参加しなかった相続人に対して家庭裁判所より検認済通知書が送られてきます。
以上が検認手続きの進め方と流れになります。
4.期間
家庭裁判所に書類を提出してから検認の日までおおよそ1か月前後となります。
ただ、検認依頼時に必要となる戸籍謄本等の書類を集めるにもある程度の時間がかかりますので、その時間を考慮したものが全体にかかる期間と言えます。
5.費用
家事審判申立書 収入印紙800円分
相続人への連絡用切手 相続人分
検認済証明書 150円
家庭裁判所へ支払う費用は上記になりますが、検認を依頼する際に必要となる戸籍にも費用がかかります。
戸籍謄本 1件450円 必要数
除籍謄本 1件750円 必要数
改正原戸籍謄本 1件750円 必要数
※戸籍謄本等の手数料はさいたま市の場合です。市区町村によって異なります。
6.まとめ
このように公正証書を除く遺言書では検認という手続きが法律で定められており、銀行・不動産関係などの相続実務でも求められるものとなります。
法律上でも実務上でも重要な手続きとなっていますので遺言書を発見又は保管していた人は遺言者が亡くなったことを知り次第、手続きを開始する必要があります。
注意点として
①必要書類に時間がかかる
遺言者の生まれてから亡くなるまでの戸籍や除籍、相続人全員の戸籍など調べて集めるには相応の時間がかかります。
②期限を意識する必要がある
遺産を放棄するかどうするか判断する期間は相続の開始を知った日から3ヶ月という決まりごとがあります。
※判断期間の延長を申請できます。
以上のことから財産によっては相続しないと考えている人の場合、手続きを進めていくにあたって時間を気にしていくことが大切になってきます。
7.最後に
2020年7月より制度が変更になり自筆証書遺言を法務局で預けることができるようになります。
これにより遺言書の保管場所で悩んだり、偽造や改ざんを心配する必要がなくなります。
加えて、上記で説明した検認手続きが不要になるので遺産を引き継ぐ人の手間と時間が軽減されます。
現在、自宅等で自筆証書遺言を保管されている方。
これから自筆証書遺言を遺そうと考えている方。
新たな制度の利用をご検討されてみてはいかがでしょうか。
当事務所では遺言書作成に関するサポートを承っております。
戸籍謄本などの収集でご心配などありましたらお気軽にご相談ください。