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遺言書 効力

遺言書に記載した事項には法的効力が伴います。
遺言者の最後の意思ですので最大限尊重すべきものとなっています。

しかしながら、書いたものすべてが尊重され法的効力が認められるわけではありません。
法律に定められた事項、つまり遺言事項のみに有効性が認められることとなっています。

端的に言えば、遺言書にはできること、できないことがあります。

 

1.遺言書でできること

一般的なものは次のものになります。

大きくわけると三つ。
一つ目は財産に関すること、二つ目は人に関すること、三つ目はその他です。

(1)財産に関すること
①相続分の指定
遺言書がない場合は法定相続分割合を目安に遺産を分けることになりますが、遺言者があらかじめ遺言者の意思で法定相続分割合と異なる割合を定めることができます。

例)遺言者が夫、相続人が妻と子2人の場合
法定相続分割合は妻1/2、子1/4ずつですが、これを妻2/3、子1/6ずつなど

②遺産分割の指定
相続分の指定では遺産の「だれに」「どのくらい」といった割合を定めますが、「なにを」は決められていません。その為、相続人の間での具体的な話し合いが必要になります。

遺産分割の指定は「だれに」「なにを」を指定するので相続人同士での話し合いは不要になります。

例)遺言者が夫、相続人が妻と子2人の場合
妻に不動産、長男には預貯金、次男には株式など

③遺贈
遺産は基本的には配偶者や子などの法定相続人に相続されるものですが、遺言書に書くことによって相続人以外に残すことができます。

例)孫に直接残したい場合や病気の時に世話をしてくれた長男のお嫁さんに残したい場合など、また、赤十字や国境なき医師団などの団体にも渡すことができます。

④特別受益の持ち戻し免除
贈与や遺贈によって被相続人から相続人が金銭や財産などもらい特別に利益を受けていることを特別受益と言います。
相続時にこのような特別受益を受けた相続人がいる場合、法定相続分で遺産を分けると不公平が生じます。
そこで民法ではこの不公平を解消するために特別受益の持戻しというルールを設け相続人同士の公平を図っていますが、一方で被相続人が特別受益の持戻しを希望しない場合もあります。

詳しくは「遺言書 特別受益の持戻しと持戻し免除」をご覧ください。

⑤生命保険の保険金受取人の変更
生命保険の受取人を変更することができます。
ただし、遺言書の確認後早々に保険会社に連絡しないと契約上の受取人に保険金が支払われてしまうため注意が必要です。

特別な事情がないのであれば生前に変更するほうが安心です。

⑥一般財団法人の設立
遺言書で設立の意思表示をおこないます。
同時に定款に記載すべき内容を書き、遺言執行者を定めることで設立することができます。

⑦信託の設定
遺言に書くことで遺産を信頼できる人に管理・運用してもらいその利益を指定した人に渡すことができます。
既存の制度では対応が難しい場合に財産管理を柔軟に設定できる信託を検討する方が増えています。

例えば知的障害を持つ子がいる、配偶者が認知症などこのような場合に有効な選択肢の一つとされています。

ただし、現状では生前に信託契約する人がほとんどです。

 

(2)人に関すること

①推定相続人の廃除または廃除の取り消し
子供や親、配偶者の相続人としての権利を失わせます。
被相続人への虐待や重大な侮辱、その他著しい非行があったときにおこなうことができます。

また、以前おこなった廃除を取り消して相続権を回復させることもできます。

②認知
婚姻関係のない男女の間に生まれた子供を認知することができます。
認知することで法律上の親子関係になり、相続人となります。

③未成年後見人、未成年後見監督人の指定
離婚や死別などで一人親となった場合、万が一を考えてあらかじめ遺言書により子供の親代わりをしてくれる人を指定することができます。
更には、その親代わりをしてくれる人を監督する人も指定できます。

 

(3)その他

①遺言執行者の指定
遺言書の内容を実行する人を指定することができます。
遺言執行者をしておくとことで手続きが円滑に進みます。

また、推定相続人の廃除や廃除の取り消し、認知など遺言執行者がいないとできない事項もあります。

遺言執行者については「遺言書 遺言執行者」をご覧ください。

②祭祀主宰者の指定
先祖の供養やお墓を守る人を指定することができます。
具体的には位牌や仏壇、墓石に墓地などの祭祀財産を受け継ぎ、葬儀や法事などを代表しておこなっていく人を指定することができます。

指定がない場合には慣習で、慣習がない場合には家庭裁判所に決めてもらいます。

 

2.遺言書でできないこと

(1)財産に関すること

①遺留分を考慮しない遺言書も有効ですが、遺留分は相続人に認められた権利です。遺留分請求を禁止することはできません。
②借金などの債務を特定の誰かに相続させることはできません。

(2)人に関すること

①結婚や離婚、養子縁組は遺言書ではできません。
②葬儀の方法やお骨の受取の是非などの記載に法的効力はありません。また、残された配偶者の介護や子供の扶養方法なども同様です。

(3)その他

①家族仲良く暮らしてください、相続でもめないようになどのメッセージには法的効力はありません。

 

 

3.まとめ

遺言書に記載して法的効力を持つものは決められた事項、遺言事項のみです。
定められた事項でないものを残しても拘束力はありません。

ですが拘束力・法的効力を持たないだけであり、意味がないというわけではありません。
前向きな言葉や優しい言葉は残された家族に強い影響力を及ぼします。

法的効力はなくとも希望や理由、感謝を付言事項としてあらわすことで相続人である家族が遺言に対し真摯に対応してくれることと期待できます。

遺言事項と付言事項、両事項を併せ残すことにより遺言者の希望に沿ったに遺言の実現に加え、トラブル回避や円滑な相続に繋がると思いますので遺言書を残す際は一緒に書くことをお勧めします。

 

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