自営業者・会社役員の帰化申請ガイド|チェックポイントを行政書士が解説

自営業者・会社役員の帰化申請ガイド|チェックポイントを行政書士が解説

自営業者・会社役員の帰化申請とは

帰化申請は、日本国籍を取得するための手続きです。会社員や公務員のように給与が安定している方とは異なり、自営業者や会社役員の場合は「事業の継続性」や「収入の安定性」、「適切な納税」などが厳しく確認されます。

事業を通じて日本社会にどのように貢献しているか、経営内容が健全であるかが審査の重要な要素になります。

帰化申請に必要な主な条件

帰化には、法律で定められた基本条件があります。主なものは以下の6つです。

  • 住所条件:引き続き5年以上日本に住んでいること
  • 能力条件:18歳以上で、母国の法律上も成人であること
  • 素行条件:交通違反や納税遅延がなく、社会的に良好な行動をしていること
  • 生計条件:安定した収入があり、生活が自立していること
  • 重国籍防止条件:帰化により元の国籍を喪失できること
  • 憲法遵守条件:暴力的な政治活動に関与していないこと

この中でも、自営業者・会社役員の方は特に「生計要件」「素行要件」が重視されます。

条件についてはこちらをご覧ください
帰化条件7つのポイント:外国人が知っておくべき普通帰化の基準
帰化には普通帰化・簡易帰化・大帰化と3つの種類があり、それぞれに異なる帰化条件が定められています。ほぼすべての方は普通帰化または簡易帰化を利用することになります…
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帰化条件7つのポイント:外国人が知っておくべき普通帰化の基準

収入・納税等の状況チェックポイント

自営業者・会社役員の帰化審査では、「事業の経営状況」「安定した収入」「適正な納税」が重要視されます。個人の状況とともに法人や事業の状況も審査の対象となります。

経営者や事業主の場合、給与所得者のような給与明細がないため、確定申告書や決算書、納税証明書などをもとに、生活の安定性が判断されます。

安定した収入の実態

審査では「今後も日本で安定した生活を続けられるか」が見られます。主な確認ポイントは次の通りです。

  • 目安となる金額の収入があるか(単身者なら300万円程度、扶養者がいる場合には1名につき50万~70万円程度を加算)
  • 業績と役員報酬が生活費や扶養人数に見合っているか
  • 売上や収入が極端に上下していないか
  • 事業は収益がでているか、また複数の事業を行っている場合、それぞれで収益があるか

法人経営者の場合は、会社の業績と役員報酬額のバランスが重要です。黒字でも報酬が低すぎたり、赤字にもかかわらず高額な報酬を取っている場合などは、経営実態との整合性を問われることがあります。

事業の継続性と実態

帰化は一時的な収入よりも、今後の生活基盤の安定を重視します。そのため、法務局では以下の点を確認します。

  • 事業所や店舗の実在(登記事項証明書・営業許可証・不動産賃貸契約書など)
  • 主な取引先や業務内容の継続性
  • 売上・経費・利益等が無理のない範囲か

納税・納付の履行状況

税金の納付状況は、帰化審査で最も重視される項目の一つです。

  • 所得税、住民税、消費税、法人税など全ての税を納付しているか
  • 納税証明書で「未納なし」となっているか
  • 分納・延滞・滞納処分がないか
  • 年金、健康保険料を納付しているか

税や保険料は完納してから申請するのが原則です。

滞納等は素行条件を満たしていないと判断され、申請を受け付けてもらえません。未納、滞納している場合には速やかに支払いを済ませるようにしましょう。

また、法人経営者や5人以上の従業員を使用する個人事業主の場合、厚生年金の適用事業所になり、会社としての加入と納付が必要になります。未加入だった場合には加入手続き後一定期間納付の実績を積んでからの申請となりますので注意が必要です。

黒字・赤字の判断基準

法人経営・事業経営は黒字での申請が原則です。貸借対照表と損益計算書で債務超過や利益の有無を確認してください。

判断のポイントは以下のとおりです。

  • 経営している会社、事業でしっかりとした利益が数年にわたりでているか
  • 赤字の場合、原因が一時的であるか、改善の見込みがあるか

確認数字の大小よりも「事業の安定性」と「経営内容」が重視されます。

書類整備の重要性

書類の整合性が取れていないと、再提出や修正を求められることがあります。

  • 事業の概要と決算書等の内容が整合しているか
  • 在勤及び給与証明書の内容が実態と一致しているか
  • 確定申告書には税務署の受付印または電子申告の受信通知があるか

事業経営者・役員特有の注意点

法人経営者の場合、会社の経営実態を裏付ける資料も求められます。

  • 登記事項証明書、法人税の確定申告書、決算書などの提出
  • 営業実態を示す書類(賃貸契約書、営業許可証、取引契約書など)

経営や役員をしている法人が複数ある場合にはそれぞれの法人分の納税証明書や事業の概要が必要になります。また、配偶者などが経営や役員をしている法人があればその法人分の各種書類も必要になります。

提出書類の詳細

主な提出書類は以下のとおりです。

  • 会社等法人の登記事項証明書、許認可証明書
  • 法人税の確定申告書(決算報告書等を含む。)の控え
  • 各種納税証明書(市区町村および税務署発行)
  • 事業内容を示す資料(パンフレット・HPなど)

帰化相談必要書類の確認表  

※東京法務局HP 帰化許可申請書に添付する書類(その他の国籍の方)より

帰化が許可されやすくするための準備ポイント

  • 経営している法人、事業は直近複数年黒字経営
  • 個人、法人の税金、年金・保険料の納付を確実に完了してから申請する
  • 年収は目安となる金額を満たす
  • 作成書類と各種証明書類が一致している

行政書士に依頼するメリット

自営業者や会社役員の帰化申請は、一般的な申請よりも書類が多く、確認項目が複雑です。行政書士に依頼することで、

  • 経営内容や税務状況を踏まえた申請書類の整備
  • 法務局との事前相談・面接対応
  • 書類の不備や説明不足によるリスクの回避

といったサポートを受けられ、スムーズかつ確実な申請が可能になります。

まとめ

自営業者・会社役員の帰化申請では個人の状況に加え、「経営の安定性」「納税」「生活の継続性」といった法人や事業の業績・内容が特に重視されます。

収入の多寡よりも、確実な納税と安定した経営を示すことが重要です。

正確な書類整備を行い、専門家の支援を受けながら計画的に準備を進めることで、帰化許可への道が開けます。